韓国のパンデミック回復計画、主軸は「グリーン・ニューディール」
韓国は、グリーン・ニューディール政策を新型コロナ後の経済復興計画の中心に据えている。現行の炭素集約型の経済から、より持続可能で環境に優しい経済への移行を加速させる狙いだ。
第6回緊急経済会議にて、文在寅(ムン・ジェイン)大統領と閣僚はコロナ禍における今年下半期の経済政策を協議し、6月1日に政府は、韓国流「ニューディール」の概要を発表した。
この160兆ウォン(1326.7億ドル)規模の景気刺激策は、「デジタル・ニューディール」と「グリーン・ニューディール」の2つの柱を据えるもので、この先5年間にわたる支出計画が組まれている。支出は、(1)今年の終わりまで 、(2)文大統領が任期を終える2022年まで、(3)2025年までというように3段階に分けて行われ、重点分野はそれぞれに異なる。
韓国政府は88万7千人の雇用創出を目標に掲げ、2022年までにおよそ67.7兆ウォン(今年の終わりまでに6.3兆ウォン)の投資を行う予定だ。残りの92.3兆ウォンは、2023年から2025年にかけて次期政権によって引き続き支出されることになる。
計画を軌道に乗せる
計画を軌道に乗せるために、韓国政府はまず史上最大規模となる35兆ウォンの補正予算案の提言策定を行い、新国会にて7月4日に可決した。
今年下半期の緊急経済対策として、第一に、雇用安定の強化策と深刻な影響を受けた企業や個人の支援策を重視するものと見られる。
7月の韓国政府の発表によると、グリーン・ニューディールに関して言えば、政府は2022年の終わりまでに「グリーン」セクターにおいて31万9千人の新規雇用を創出する目的で、2020年から2022年にかけて合計32.5兆ウォンを投資する方針だ。
グリーン・ニューディールは、次の3分野を中心に据えている。
- 既存のインフラのグリーン化
- グリーン産業のエコシステムの構築
- 低炭素・分散型エネルギーの拡大
それぞれ6.1兆ウォン、3.2兆ウォン、10.3兆ウォンが充てられている。
だが、その一方で専門家らは、グリーン・ニューディールを成功させるには、政府は詳細な長期計画と関連政策の改正を組み入れる必要があると指摘している。
韓国環境研究所のイ・チャンフン副所長は、「グリーン・ニューディールは、経済の活性化を助長するだけでなく、グリーンな社会への移行にもつながる長期計画と政策の改正を伴うべきです。これには国民の合意が必要です」と述べている。
「それは気候危機への対応策でもあり、気候危機と相互に影響し合う経済的、社会的危機についても考慮すべきです。」
より野心的な計画を要請
また市民団体は、グリーン・ニューディールには、4月15日の総選挙前に政権与党である民主党のグリーン・ニューディール・マニフェスト(政策公約)に含まれていた海外における石炭火力発電への投融資禁止の取り決めなどのより野心的な計画が盛り込まれるべきだと主張している。
そうした懸念について理解を示し、民主党の議員らは気候変動法の制定を推し進める方針を表明している。
初当選した民主党のイ・ソヨン議員は、「気候変動に取り組むうえで、石炭火力発電に海外も国内もありません。韓国輸出入銀行(KEXIM)などといった韓国の国営金融機関による、海外の石炭プロジェクトへの公的資金の投入は直ちに中止されるべきです」と述べている。
「政治家と市民社会の取り組み次第で、近いうちに公的金融機関が石炭への投融資の部分的廃止、または全廃を発表する可能性がおおいにあると思います。それをできる限り速やかに実現させるべく最大限の努力をしていきます。」