公的資金を低炭素セクターに投資すべき4つの理由
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公的資金を低炭素セクターに投資すべき4つの理由。
1. 石油需要のピークはすでに過ぎ去った可能性があり、座礁資産は現実に迫っている問題である。
石油需要は2019年にすでにピークに達したと推測される中、ロイヤル・ダッチ・シェルやBPといった石油大手でさえも、新型コロナウイルスによりピークは前倒しになっていると予測している。カーボントラッカーよると、パンデミック前に、化石燃料需要の成長率(年)はすでにわずか1%まで低下しており、世界の40%近くで化石燃料需要は減少を見せていた。石油および天然ガス会社はE&P(探鉱・開発・生産)事業において、継続する深刻な伸び悩みに直面している。BPは、石油および天然ガスの長期価格の調整により175億米ドルの資産を減損処理しており、従業員の約15%を解雇することになるという見通しを発表した。その一方で、ロイヤル・ダッチ・シェルは220億米ドルの評価損を計上する可能性があると警告している。
新型コロナによる影響が続く中、パンデミックと気候変動はシステム全体を揺るがす危険性をはらんでいるという点で類似していることが明らかになっている。ファイナンス・ウォッチ(Finance Watch)が発表した報告書によると、座礁資産化のリスクがあることから、気候変動は金融システムにとってさらに増して大きな脅威となる。総額約2.2兆米ドルに及ぶ運用資産を保有する投資家グループは、未開示の財務リスクを危惧し、石油および天然ガス会社に対して業績見通しに気候変動リスクを含めるよう求めている。
2. 交通機関の電動化の規模は拡大し、急成長している。
電気自動車(EV)テクノロジーがまだ萌芽期にあった2008年に比べ、今日の電動化輸送(electric transport)セクターは世界的に急成長している。EVの販売台数はここ10年で急増しており、2010年の数千台から2019年には2百万台を上回るまでになった。またEVは、おそらく今年中にICE(内燃機関車)の価格と同等になると見込まれる。ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)によると、現在、世界全体の販売台数は、EV乗用車が700万台超、電気バスが50万台超、電動バン・トラックが40万台、電動三輪車が1億8400万台にのぼっている。
それに対して世界の自動車産業は、2017年に販売がピークに達して以来、下降傾向を見せており、EVに市場シェアを奪われる中、その販売は回復しない可能性がある。グリーン景気刺激策は、EV充電インフラの整備やその他の支援措置の推進を後押しし、経済グリーン化に向けた輸送セクターの移行を加速させることができる。
3. 世界の3分の2で再エネはすでに化石燃料よりも安く、2020年になり欧州では再エネが勝っている。
2020 年前半は、EUの総発電量の40%を再生可能エネルギーが供給した一方で、34%を化石燃料が供給した。ここ10年で再生可能エネルギーは、化石燃料とコスト面で張り合うようになり、数々の予測が見込んでいたよりも速いペースで成長している。クリーンテクノロジーのコスト低下と、投資家の信頼感の高まりによる再生可能エネルギー・プロジェクトの資本コストの低下、そして支援政策の強化は、いずれも世界的に再エネセクターの急速な拡大を推進している。太陽光(PV)発電コストは2010年から81%低下し、陸上風力発電コストは46%低下した。それと同時に、新規に導入された再生可能エネルギーによる発電設備容量は、ここ10年の間に年率8%の成長率で急増している。
国際エネルギー機関(IEA)は、今年エネルギーセクターで成長するのは再生可能エネルギーのみで、総発電量における再生可能エネルギーのシェアが5%近く増加すると予想している。IEAによれば、太陽光は16%、風力は12%とそれぞれ需要が増加する一方、2020年の天然ガス(5%減)、石炭(8%減)、および石油(9%減)の需要は減少することになる。また、カーボントラッカーによると、これまでのところ再生可能エネルギーのコストは実際に低下しており、電力貯蔵用の蓄電池を含め再生可能エネルギー発電設備を新設する方が、世界の既設の石炭火力発電所の39%を運営し続けるよりもコスト効率がすでに高くなっている。
4. 低炭素セクターは、化石燃料セクターよりもはるかに大きな雇用創出効果をもたらす。
いくつかの研究が示すところによると、クリーンエネルギー・インフラはとりわけ多くの労働力を必要とすることから、グリーン景気刺激策は景気後退により雇用の受け皿が枯渇する短期においてより多くの雇用を創出する。エネルギー効率化または再生可能エネルギーセクターへの投資1ドル毎に創出される雇用は、化石燃料の2倍以上になる。
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の新たな推定によれば、新型コロナ景気刺激策の一環として再生可能エネルギーに投資した場合は100万ドルあたり25人分の新規雇用が創出される一方で、同額を エネルギー効率化に投資した場合には10人分の雇用が創出されることになる。また、より大規模な脱炭素化は、将来的にエネルギー分野の雇用を倍増させることになる。エネルギーセクター(すべての種類のエネルギー)における2017年の雇用者数は5800万人で、そのうち1100万人は再生可能エネルギーセクターでの雇用であった。IRENAによると、低炭素社会への移行は、2050年までに1億人分のエネルギーセクターの雇用につながる社会・経済の新しい発展パターンを生み出し、環境および健康面でのメリット、そして人々の福祉の向上を期待するものである。
この雇用創出効果は、先進国だけでなく発展途上国でも見られている。ある研究が示すところによると、中国では2010年に太陽光(PV)発電のシェアが1%増える毎に、総雇用者数に0.68%の増加があり、他のどの発電テクノロジーにも勝る大きな効果をもたらした。