2008年の米国の緑の景気刺激策

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2008年の米国の緑の景気刺激策

2020年7月8日 – by Energy Tracker Asia   Comments (0)

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2007年に始まった景気低迷の煽りもあり、2008年の金融危機で米国経済は大きく落ち込んだ。米国が深刻な不況に陥る中、GDP(国内総生産)成長率は1958年以来の急低下を見せ、2008年の第4四半期にはマイナス5.4%、続いて2009年の第1四半期にはマイナス6.4%まで落ち込んだ。景気後退の始まりから2009年2月にかけて失業者数は460万人に達した。

米国における2008年の景気刺激策パッケージ

2008年の世界金融危機を受けて、経済復興のための景気刺激策パッケージが発表された。「グリーン公的支出」は 、2008年10月に可決された緊急経済安定化法(EESA)と、2009年2月に可決されたアメリカ復興・再投資法(ARRA)、そして2010年度予算という3つのカテゴリーを含んでいた。同パッケージの総額の約8分の1は「グリーン事業」に充てられた

銀行救済(バンク・ベイルアウト)としても知られる緊急経済安定化法は、サブプライム住宅ローン危機への対応策として米国議会で可決された法案であり、財務長官に銀行から7,000億米ドルまで不良資産を買い取り、流動性を回復する権限を与えた。それに続き、2009年2月にオバマ政権はアメリカ復興・再投資法を発表。これは7,870億米ドルを注入して経済を押し上げるもので、その甲斐あって2009年7月に米国は不況から脱することができた。ちなみに、その総額は、のちに 8,310億米ドルに修正されている。

オバマ政権のアメリカ復興・再投資法のグリーンな構成要素

アメリカ復興・再投資法のもと、クリーンエネルギー・テクノロジーに920億米ドルが投入され、そのうち210億米ドルは再生可能エネルギーに充てられた。それはエネルギー関連投資の4つのカテゴリー「省エネ・送電網・交通・クリーンエネルギー」に重点を置くもので、2009年から2015年にかけてクリーン産業におよそ 90万人の雇用を創出した。

景気刺激策パッケージは、政府機関とNGOに対して、クリーンエネルギー業界の失業者と現行の労働者を再訓練するための資金を提供した。アメリカ復興・再投資法には、税制優遇措置や融資の保証、クリーンテクノロジーの研究開発に対する補助金が含まれていた。そして、それは風力や太陽光などの低炭素エネルギーの製造業と発電において、1,000億米ドルを超える民間資本の活用(レバレッジ )を可能にした。

オバマ政権のアメリカ復興・再投資法は、米国のクリーンエネルギー経済を強化したことから「史上最大のクリーンエネルギー法案」と見なされている。概して、米国の緑の景気刺激策は、再生可能エネルギーセクターに好影響を与えた。2008年以降、風力発電設備の新規導入はほぼ4倍に増え、太陽光発電設備は50倍になった。2008年から2016年にかけて発電所規模の太陽光発電のコストは60%低下し、20州において太陽光はコスト面で化石燃料と肩を並べるようになった。2008年から2012年には、再生可能エネルギーの取り込みによって270Mt(メガトン=100万トン)に及ぶCO2の排出を阻止することができた。

電気自動車とバッテリーの製造に向けた緑の景気刺激策

アメリカ復興・再投資法は、戦略的に競争的な環境を作り上げ、電気自動車(EV)とバッテリーの製造も活発化させた。リチウムイオン電池の価格は、2008年の1,000米ドル/kWh(キロワット時)から2014年には300米ドル/kWhまで低下した。同法は、米国におけるEVの復興に役立ち、その後ろ盾を得て自動車製造業者16社が28の新EVモデルをリリースし、EVの販売台数は2008年の数千台から2015年には40万台まで増加した。BNEFによると、米国のEV 市場規模は世界第3位であり、2019年のEV販売台数は32万台にのぼった。

アメリカ復興・再投資法によるグリーン刺激の成果

大統領経済諮問委員会(CEA)によると、アメリカ復興・再投資法は2009年後半から2011年半ばにかけて米国のGDP成長率を2〜3%上昇させた。2015年に米国議会予算局(CBO)は、2009年から2012年の間に同刺激策によって、とりわけ2011年を中心に200万から1,090万人の雇用が創出されたと推定している。

クリーンエネルギー・パッケージへの官民投資は前例のない規模となったが、アメリカ復興・再投資法は供給面の短期的な投資に重点を置いたものだった。エネルギーや気候変動の法規に関する規制面の確実性があれば、クリーンエネルギー企業への投資をより一層促進した可能性がある。融資保証プログラムは、クリーンテクノロジーのコスト削減という明示された目標を達成したものの、倒産(言い換えれば、ソリンドラ社)のために不評だった。

オバマ政権はこの融資プログラムでもって、米国がクリーンエネルギー・テクノロジーの開発・製造で世界のリーダーとしての地位を確立することを目指したが、中国との競争により損なわれた。


本ブログはコロナ経済危機への対応策としての「緑の景気刺激策」シリーズの一部であり、本記事以外にも2008年〜2009年に中国韓国欧州で実施された景気刺激策パッケージを事例として紹介し、様々な角度からその有効性を探っていく。

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