コロナ経済危機への対応策としての「緑の景気刺激策」
新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、2008年以来の世界的な金融ショックをもたらしている。それは世界経済を景気後退へと向かわせ、おそらく過去数十年で最大規模となる経済的混乱を引き起こすと見られる。
各国政府の緑の景気刺激策への拠出額
世界各国の政府や金融機関がコロナ危機への対応策を講じる中、景気後退を防ぎ、雇用を促し、回復を加速させるための景気刺激策パッケージがまとめられることになる。それらはおそらく、雇用と所得の増加に向けて公的支出を促進する財政政策と、金利の引き下げや市場への直接介入(例えば、資産購入)などといった中央銀行による金融政策を含むことになるだろう。
「緑の景気刺激策」は2008年の金融危機への対応策に組み入れられた。ここ数年は、欧州中央銀行などの中央銀行が気候変動を最優先事項とする明らかな兆しがあり、中央銀行の介入がグリーン経済への移行を推進する変革力となる可能性がある。
緑の景気刺激策(グリーン・スティミュラス)とは?
緑の景気刺激策とは、省エネ(エネルギー高効率化)や地球環境の改善に直接つながる形で金融支援を行うものだ。その施策には、再生可能エネルギー、省エネ対策、交通・送電網インフラなどといった様々なカテゴリーの支出が含まれる。
従来のインフラ刺激策と言えば、道路の建設や石炭火力発電のように長期にわたって環境に影響を及ぼす炭素集約型の活動を好むものだったが、グリーン刺激策はそれとは異なる。グリーン刺激の取り組みは、クリーンな雇用と持続可能な経済成長をもたらすことによってより良い代替案を提供する。
世界銀行の言葉を借りると、最も便益のある緑の景気刺激策とは「短期的には雇用を刺激し、長期的には生産コストの低下を通じて大きな“ラーニングカーブ(学習曲線)”効果を生み出す」ものだ。
2008年の世界金融危機への対応策としての緑の景気刺激策
2008年の金融危機の翌年、世界の半数の国において経済活動が低下した。それを受けて、世界の経済大国はグリーン財政政策を含めた景気刺激策パッケージを打ち出した。
2008年から2009年にかけて3.3兆米ドルを超える財政政策が実施され、そのうち推定5,220億米ドルがグリーンな施策と投資に費やされた。緑の景気刺激策の支出額で見ると、中国(2,210億米ドル)、米国(1,120億米ドル)、韓国(310 億米ドル)、そして欧州(230億米ドル)が世界のトップ4だった。
支持者によれば、よくデザインされたグリーン刺激策は「何百万もの家族を養える持続可能かつグリーンな雇用を生み出し、生活水準を高め、化石燃料からの公正な移行を促進し、民間セクターにおけるベイルアウト(公的資金の注入による企業救済)計画のすべてに民意を反映させ、将来的に私たちの社会と経済をパンデミックや景気後退、気候非常事態に対してより強靭で、回復力(レジリエンス )に優れたものにするのに役立つ」という。
だが、経済学者は、化石燃料補助金を見直し、強力な政策と規制を実施しない限り、環境面の利点はおそらく長続きしないことから、緑の景気刺激策のみでは世界的な「グリーン」への移行をサポートすることはできないと主張する。
同ブログ・シリーズでは、2008年〜2009年に米国、中国、韓国、そして欧州で実施された景気刺激策パッケージを事例として紹介し、様々な角度からその有効性を探っていく。