中国、石炭火力発電の拡張規制を 3年連続で緩和

2020年5月13日 – by Gao Baiyu

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中国は3年続けて、数々の地域に対して、石炭火力発電の設備過剰リスクの度合いを引き下げている。この動きは、2021年から2023年にかけてさらに多くの地域で石炭火力発電所の新増設を可能にするもので、来年に実施予定の第14次5カ年計画で石炭が重要視される兆しだと、専門家は捉えている。

中国の国家エネルギー局(NEA)は毎年、3年先を見据えた「石炭火力発電の設備容量の計画および建設に関するリスク警告」を発表している。

2月26日に公表された2023年度リスク警告では、生産能力の適性度に関して赤色(石炭火力発電の設備過剰のリスクが高いという意味)がついたのは、3つの地域のみだった。橙(だいだい)色は2つから3つに増えたものの、その他の地域はいずれも緑色という評価である。

同警告の中でも、石炭と水需給のひっ迫の程度を表す資源ストレス度評価については、昨年度から変化はなく、同じ12地域に赤色がついた。収益性に関しては、10地域が赤色(事業運営の採算がとれない可能性が高い)で、橙色は2つから1つに減少した。

収益性の警告はあくまでも注意を促すものだが、生産能力の適性度あるいは資源ストレス度のいずれかで赤色か橙色がつくと規制の対象となり、これらの地域では、地元の需要対応のための新規の石炭火力発電プロジェクトを認可することも、着工に移すこともできない。緑色の地域だけで建設が許可されることになる。

過去3年間のリスク警告を見ると、生産能力の適性度と資源ストレス度で赤または橙色がついた地域の数は減少しており、2021年には26、2022年には17、2023年には13となっている。

分析手法に問題

華北電力大学・経済学研究科の教授であるユアン・カカイ氏は、最近のCaixin(財新)のコラムにて、このリスク警告システムの経緯を説明するには2014年まで遡ることになると述べている。2014年といえば、石炭火力発電プロジェクトの建設許可の権限が各省に移譲されたことに伴い、多数の着工が見られた年である。第13次5カ年計画が掲げる「自国の石炭火力発電を200ギガワット(GW)増設する(合計で1100GWにする)」という目標は、すでにこれらのプロジェクトの建設が進行していることを受けて、政府が後づけしたものだと同氏は指摘する。設備過剰のリスクを認識していた政府は、地域レベルで石炭火力発電の設備容量に上限を設ける必要が生じた時のために、交通信号を模した事前警告システムを採用した。その目的は、発電所の新設をペースダウンすることだった。

“そのようなデリケートな時期に、青信号(緑色)の点在するリスク警告を発表するということは、非常に明確なサインを送っている。”

そのシステムには欠陥があると、カカイ氏は見ている。なぜなら、生産能力の適性度の算定手法が不明瞭であり、地域をまたぐ送電網を通じた電力の共有や、ピーク時の電力使用をカット(減少)または他の時間帯にシフトさせる「デマンドレスポンス」など、その他の要素を考慮していないからだ。また、資源ストレス度や収益性の指数は、地方環境の限界や石炭火力発電セクターが抱える経営上の問題点を正確に反映していないという。

リスク警告システムの当初の目的は、石炭セクターに対する抑制機能を担うことだったが、それどころか、2014年に見られた石炭への莫大な投資が再び行われることを予兆している。中国のエネルギー当局は現在、第14次5カ年計画を策定中であり、カカイ氏は「そのようなデリケートな時期に、青信号(緑色)の点在するリスク警告を発表するということは、非常に明確なサインを送っている」と指摘する。中国電力計画・工学研究所(China Electric Power Planning and Engineering Institute)の報告書を受けての変更かもしれないが、同報告書は2023年以降に全国的な電力不足が生じることを予測するもので、大きな議論を呼んでいる。だが、それにより、電力供給を確実にするために、第14次5カ年計画にて石炭火力発電を拡張するよう要請する声が強まった。環境メディア「China Dialogue」にて同氏は、規制の緩和は、2023年以降のエネルギーの安定供給に対する国家エネルギー局の懸念を反映させた結果かもしれないと述べている。

だが、先述のコラムでカカイ氏が指摘するように、石炭火力発電所の稼働率は、第13次5カ年計画(2016〜2020年)の出だしからすでに低下していた。グローバルエナジーモニター、エネルギー・クリーンエア研究センター (Centre for Research on Energy and Clean Air: CREA) 、グリーンピース、およびシエラクラブが3月に共同発表した報告書によると、稼働率は2019年にさらに低下している。それだけでなく、毎年の石炭火力発電の増設が過剰生産の状況を悪化させている他、規制緩和に伴い、延期されていたプロジェクトが再開していると指摘。CREAのリードアナリストであるラウリ・ミルヴィエルタ氏は、「中国ではいまだに石炭火力発電を支持し、2030年までに何百もの発電所を新設するよう求める声があります。このことは気候変動に取り組むという同国の国際公約に明らかに反しています」と述べている。

三月中旬に、独立系金融シンクタンクの「カーボントラッカー」が発表した、世界各地における石炭火力発電の競争力に関する報告書によると、中国では 99.7GWに及ぶ石炭火力発電所が建設中で、さらに106.2GWの増設が計画されているという。これは世界全体で建設中あるいは計画中の石炭火力発電所の設備容量の40%にもなる。

石炭火力発電、硬直化のリスク

石炭火力による電力の過剰生産の状況が悪化していることは、石炭産業にとってのリスクだ。

石炭火力発電会社はすでに赤字経営に陥っている。もう何年も設備稼働率は低迷しているうえ、石炭価格が高騰する一方で電力価格は下落しており、中国の石炭火力発電会社は多大な損失を吸収しなければいけない状況にある。中国電力業界連合会(China Electricity Council:CEC)の2018-2019年度報告書によると、2018年におよそ半数の火力発電会社が純損失を出している。

収益減の問題はさておき、パリ協定の目標を満たすだけ二酸化炭素の排出を制限するとなれば、石炭火力発電所は座礁資産化するおそれがある。メリーランド大学主導で行われた、2017年水準の既存の石炭火力の発電設備容量に基づく研究によると、発電所の新設をやめない限り、石炭火力発電の段階的廃止をスムーズに行うことはできない。世界の平均気温上昇を1.5℃に抑えるというパリ協定の目標に基づけば、2410億元(340億米ドル)もの資産が座礁することになる。2℃目標では、650億元(90億米ドル)が座礁資産化するという。

 “中国の電力業界の戦略方針についての合意はまだありません。”

たとえ国際条約がなかったとしても、市場要因が資産を座礁させ、また、その規模がさらに大きくなる可能性すらある。カーボントラッカーの報告書は、中国の石炭火力発電の座礁資産化のリスクは「非常に高い」と推定している。同国で稼働中の石炭火力発電所のうち7割は、その運営コストが、陸上風力発電所あるいは太陽光発電所の新設にかかるコストを上回っているという。中国がこれらの石炭火力発電所を運営し続けるなら、総額1600億米ドルもの投資を座礁資産化のリスクに晒すことになる。同報告書は中国に対し、建設中あるいは計画中の石炭火力発電プロジェクトのすべてを直ちに中止し、生産能力が過剰あるいは競争力を失っている省にある発電所を選別のうえ廃止し、既存の発電所の稼働率を上げるよう勧めている。

同報告書の著者の一人であるマット・グレイ氏は、最近公開された記事の中で、パンデミック後の景気刺激策において、石炭火力発電への投資に対する融資を避けるよう、中国に要請している。

変わりつつある石炭火力発電の役割

そうした中でも規制は緩和され、新規プロジェクトが着工に移っている。グローバルエナジーモニターによると、3月の最初の18日間だけでも、中国は7.96GWに及ぶ石炭火力発電所の建設を許可している。それは2019年の建設許可の6.31GWを上回る規模だ。

一方、風力または太陽光発電プロジェクトはというと、それとはかけ離れた状況にある。 エネルギー当局が認可済みのプロジェクトの送電網への接続期限を延長し、補助金が支払われるようにするのをいまだに待っている。

では、再生可能エネルギーによる電力コストが下がり、世界的なエネルギー転換が進む中、なぜ中国は座礁資産化の危険を冒してまで不採算セクターに資金を注入しているのだろうか?

それは安定性と規模に関係すると、カカイ氏はChina Dialogueで言っている。石炭は、制御可能かつ安定した電力源であり、送電網の安定性を維持しやすい。また、手っ取り早く経済を活性化するには、小規模の再生可能エネルギープロジェクトよりも、はるかに規模の大きい石炭火力発電所の建設プロジェクトの方が適している。3月に石炭火力発電所の建設許可が急増したのは、地方政府が投資を安定させ、経済を刺激することによって、経済へのパンデミックの影響をなんとか緩和させようとしていることの表れだと、同氏は見ている。

中国再生可能エネルギー協会(China Renewable Energy Society:CRES)の風力発電委員会の幹事を務めるチン・ハイヤン氏は、石炭火力発電業界のロビー活動の役割と、再生可能エネルギーに対する保守的な態度を指摘する。同氏はChina Dialogueの取材にて、「一部の人たちは、風力と太陽光が石炭に取って代わることはできないという考えに固執しています。電力の供給能力を確保するには石炭に頼らなければいけないと。中国の電力業界の戦略方針についての合意はまだありません」と述べている。

カカイ氏はCaixin(財新)の記事の中で、自身の研究チームが導き出した研究結果に基づけば、第14次5カ年計画の実施期間(2021〜2025年)における中国の新たな電力需要は、低炭素資源で満たすことができると述べている。再生可能エネルギーにより一層大きな比重を置いた電力システムでは、石炭は安全かつ瞬時対応力のある予備電源を提供する「レギュレータ」としての役割を担うことができる。


※本記事は、Gao Baiyuの執筆によるもので、China Dialogueにて最初に公開されました。

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