エネルギーミックスの見直しから将来像を垣間見る
10 April 2021 – by Ayumi Matsuo Comments (0)
日本は、技術進歩と革新性のベンチマーク(比較基準)として見られることが多い。トレンドセッタ
ーとしての日本のあらゆる面での取り組みは、全世界に注目されている。日本で現在進められて
いるエネルギーミックス(電源構成)の見直しに関しても、それは同じだ。日本が持続可能な道を
選ぶのかどうか、どれだけ早期に化石燃料依存から脱却する計画なのかは、その結果によって
決まることになる。
日本のエネルギーミックス
IEA(国際エネルギー機関)によると、2019年には化石燃料が日本の一次エネルギー供給量の
88%を占めていた。その割合は、IEA加盟国の中で6番目に高い。そのうえ、現在の一次エネル
ギー需要の96%は海外からの輸入によって賄われている。
その化石燃料依存度の高さから、日本は二酸化炭素(CO2)排出量で世界ランキング5位となっている。2011年以降、排出量は徐々に減少しているものの、 IEA 加盟国の中で排出最多国として名を連ねていることに変わりはない。
明るい側面としては、ここ数年、日本はエネルギーミックスをかなり多様化している。再生可能エネルギーに焦点を移し、エネルギー政策とシステムの改革に乗り出した。まだ改善の余地が大いにあるとはいえ、これまでの結果は満足のいくものだ。
日本の現行エネルギー政策
日本は、温室効果ガスの排出を2030年までに26%(またはそれ以上)削減し、2050年までにカーボンニュートラルを達成するという目標に沿うように、エネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に増やす計画だ。
2015年に策定された現行の計画は、2030年までに日本の電力需要の22〜24%を再生可能エネルギーで賄うことを目指すものだ。近年の大きな進展により、日本は予定より10年早い2020年にその目標を達成した。
だが、特に再生可能エネルギーのポテンシャルの大きさを踏まえれば、その割合は多くの欧州諸国と比べてかなり低くなっている。再エネ導入で先を行くミャンマー (68%)、スリランカ(51.3%)、フィリピン(47.5%)、インドネシア(47%)などのアジア諸国と比較すると、この差はさらに顕著だ。
予定よりも早く目標を達成したことで、日本は2030年エネルギーミックスの再エネ比率を引き上げ、より良い結果を目指す絶好の機会を得た。日本の産業界は、それを単なる機会ではなく、むしろ必要として捉えている。
企業セクターによる「グリーン化」要請
日本のエネルギーミックスの見直しを受けて、日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)は、「2050年ネットゼロ」目標に沿うために2030年の再エネ比率を 50% に引き上げるよう政府に要請した。
2020年12月、日本は新たな「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を発表した。同戦略は、環境を保護しながら経済成長も促すことを目指すものだ。
同戦略では、再エネ比率を2050年の電力需要の50〜60%としている。残りは、原子力とCCUS(CO2を回収、利用、貯蓄する技術)付きの火力発電(30〜40%)のほか、水力とアンモニア発電(10%)で賄うことになる。だがそうした計画は、日本の2050年ネットゼロ社会目標を損ないかねない。
日本のエネルギーミックス見直しの重要性
2020年10月、日本はエネルギーミックスの見直しを開始した。この取り組みは、再生可能エネルギー導入を加速し、中長期エネルギー計画の更新という意図を反映するものだ。
その見直しの結果は、世界の関心を集めている。というのは、それが2050年までのカーボンニュートラル達成に向けた日本の決意を明らかにするからだ。日本が次にとる行動は、世界のエネルギー業界にとって貴重な教訓となり、また再生可能エネルギーを「前進する手段」として確立させる可能性がある。日本は、グリーンエネルギーへの転換の加速について、国際社会と共有するビジョンを実施していく上で、理想的な立場にある。
再生可能エネルギーは、他のどの電源よりも早急かつ低コストに普及することができる。そんなわけで、再エネは現在日本が抱える課題の多くに対する解決策になると言っても間違いないだろう。それゆえエネルギーミックスの見直しは、日本だけでなく、地域全体にとっての最重要トピックとなる。
企業からの呼びかけは、日本が将来のビジョンを構築するためには、強力な政治的リーダーシップが必要だと結論づけている。日本政府が2050年ではなく、企業セクターの要請する2030年までの再エネ比率50%に取り組むかどうかはまだ明らかでない。だが、世界の視線が注がれているのは確かだ。 (松尾歩)