洋上風力発電 – 日本の「2050年ネットゼロ」のカギ

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洋上風力発電 – 日本の「2050年ネットゼロ」のカギ

20 April 2021 – by Ayumi Matsuo

2020年10月、菅首相は2050年までに日本をネットゼロ(温室効果ガス排出実質ゼロ)にする目標を発表した。再生可能エネルギーの開発が停滞していることを考えれば、日本が抱える課題は山積みだ。しかし、日本には、その計り知れない洋上風力発電の潜在能力に支えられた、脱炭素社会への移行を加速させる切り札がある。

日本の洋上風力発電の潜在能力

日本の地形には、風力発電の大きなポテンシャルが特性として見て取れる。日本列島は6,850の島からなるが、国土の70%以上は山岳地帯だ。風力が他のどの再エネよりもはるかに高い潜在能力を持つ理由は、この2つで説明がつく。

日本の洋上風力発電の潜在能力は、国全体の電力需要を8.1倍上回っている。日本風力発電協会(JWPA)によれば、日本は着床式128GW、浮体式424GWの潜在能力を視野に入れた大規模洋上ウィンドファームの建設を実際に目指せるという。

出典:IEA

事実、洋上風力発電の潜在能力では、日本はEU、米国と共に世界トップだ。

だが、こうした数値だけでは全体像は見えない。理解を深めるには、洋上風力発電の考え方を掘り下げる必要がある。第一に、それは唯一の「変動型ベースロード」発電技術であること。より高効率な風力タービンやその他の技術的進展によって、新たな洋上風力発電プロジェクトの設備利用率は40〜50%となっている。

出典:IEA

洋上風力発電所の発電容量は、天然ガスや石炭などの従来のエネルギー源を用いた効率の良い火力発電所に匹敵する。また、それは太陽光(PV)の発電容量の2倍になる。

日本の風力発電の現状

その計り知れない潜在能力にも関わらず、日本のエネルギーミックスに占める風力発電(洋上と陸上を合わせて)の割合は最も小さい。 現在、日本の洋上ウィンドファームによる総発電量は20メガワットにすぎない。それどころか、日本は世界の洋上風力発電大国トップ10にも入っていない。おまけに、経済協力開発機構(OECD)上位10カ国のうち、日本の(エネルギー)自給率は最も低くなっている

出典:IEA

日本政府は、風力の発電設備容量を2030年までに10ギガワット2040年までに30〜45ギガワットまで増やす計画だ。もしこれらの野心的な目標を達成できれば、日本は世界第3位の洋上風力発電大国になる。

日本風力発電協会の中村成人専務理事によれば、2050年までに90ギガワットを目指すことも現実的に可能だという。

ポテンシャルを生かす日本の計画

日本は、大きな洋上風力発電のポテンシャルがエネルギーの変革のカギになることを認識している。そのうえ洋上風力発電は、2050年までにカーボンニュートラルに達成するのに一役買うことができる。そんなわけで、関係省庁は、ネットゼロに向けたロードマップに沿わせるベく、すでにエネルギー政策の見直しを始めている。

国内の洋上ウィンドファーム事業に向け、海外からの投資誘引

2019年の「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(再エネ海域利用法)」の施行をもって、洋上風力発電業界に対して継続的な支援を行うための取り組みが始まった。

最終目標は、洋上ウィンドファームのローカル・サプライチェーンを形成するために、海外の風力タービンおよびブレード製造メーカーを誘致することにある。その実現に向け、政府は数々の施策を講じる予定だ。それには例えば、新規事業者による市場参入の障壁の引き下げ、地質調査や地元調整への関与、風況・海底地質調査、送配電網ネットワークの増強などがある。

大手製造メーカーを国内に誘致する日本の取り組みは、すでに実を結んでいる。公募が開始している洋上風力発電事業への入札がいくつかある。2020年、ドイツ再エネ大手RWEと九州電力は、秋田県の由利本荘市沖で日本初の大規模な商用洋上ウィンドファーム建設プロジェクトを開始。また洋上風力発電の世界最大手、オーステッド(デンマーク)は、東京電力ホールディングスと共同で、千葉県の銚子市近郊にウィンドファームを建設する計画を発表した。

さらに日本は、洋上風力発電のコストを低減する計画を立てている。目標は、2030年から2035年の間に火力発電のコストよりも安くなることだ。この取り組みが成功すれば、2030年前半には洋上風力発電のコストは8円/kWh(キロワット時)まで下がる可能性がある。そうなれば、5〜6円/kWhという欧州における現在のコストに近づくことになる。

エネルギー資源の海外依存軽減策としての洋上風力

経済産業省・資源エネルギー庁によると、日本は化石燃料に大きく依存している。同国の一次エネルギーの海外依存度は約96%となっていることを踏まえれば、洋上風力は大いに必要とされる。

また、マッキンゼーによれば、1GW規模の洋上ウィンドファームは、年間の燃料輸入金額を3億米ドル以上削減できるという。

一言でいうなら、日本の洋上風力発電の潜在能力は、企業誘致と国内における舞台づくりと共に、明るい未来を照らし出している。

(松尾歩)

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